← ブログ一覧

農場だより2026年10月15日

バジルは冷たい場所で黒く変わります

バジルは冷やすほど早く傷んでしまう、珍しい野菜です。12℃を下回ると葉が褐色に変わり、香りが抜ける低温障害が起こります。その原因と、育てる段階から変わってくることを整理しました。

葉物野菜やハーブは、たいてい冷やすほど日持ちします。クレソンやミントは0℃で長ければ4週間まで新鮮さを保つといわれます。バジルは逆です。ほかの野菜と一緒に冷たい場所に入れておくと、数日で葉が黒く変わります。腐ったのではありません。寒さで傷んだのです。これを低温障害と呼びます。

12℃を下回ると傷みます

米国ラトガース大学の研究チームが2023年に学術誌Frontiers in Plant Scienceに発表したレビュー論文は、バジルが寒さに非常に敏感であり、これが熱帯由来の植物に広く見られる性質だと説明しています。論文によると、12℃より低い温度で保管するとバジルの葉が傷み、10℃を下回ると被害が深刻になります。

症状は目に見えます。葉に斑点ができたり褐色に変わったりし、張りを失ってしおれます。同じ論文は、バジルが最初に傷んだ様子を見せるまでにかかった期間が、10℃で平均8.3日、5℃で3.2日、0℃で1.6日だったという研究を紹介しています。冷たいほど早く傷んだのです。

葉が黒くなる理由は細胞膜にあります。米国カリフォルニア大学デービス校の研究チームは、同じ年に同じ学術誌へ発表した論文で、寒さを受けると細胞膜が次第に健全性を失い、内部にあったイオンや物質が漏れ出し、葉ではそれが褐変や変色として現れると説明しています。

香りが先に抜けます

バジルは香りを味わう野菜です。低温障害はこの香りも奪っていきます。デービス校の研究チームは、ジェノベーゼバジルとレモンバジルを5℃、10℃、15℃に置き、香りを生む成分を測定しました。5℃に置いた葉は、10℃や15℃に置いた葉より低温障害が激しく、香り成分もより多く失われていました。

同じ論文は、香りや味が抜ける現象が、目に見える症状より先に現れうるという先行研究も併せて伝えています。葉がまだ問題なさそうに見えても、香りはすでに減っている可能性があるということです。

流通が難しい理由

問題は、バジルが単独で流通するわけではないという点にあります。ラトガース大学の論文は、バジルの寒さへの敏感さが生産者、流通業者、小売店のすべてにとって大きな問題だと記しています。病害や腐敗を減らすために、バジルやハーブをほかの生鮮野菜と一緒に低い温度で保管し、輸送することが多いためです。

だからといって暖かく置くこともできません。温度が高ければ微生物が増えます。論文は、保管温度を12〜15℃にすることが、低温障害と香り、微生物を同時に扱ううえでの折衷点だと整理しています。論文が発表された2023年時点で、寒さに強いと確認されたスイートバジルの品種はまだ市販されていないことも明らかにしています。

育てる段階から変わります

収穫後の温度だけではありません。ラトガース大学の論文は、育て方が収穫後の品質を変えるという研究をいくつも集めています。

一つは収穫時刻です。夕方6時に収穫したスイートバジルは、早朝に収穫したものより10℃と20℃で2倍近く長持ちしました。もう一つは光です。栽培の最後の3週間に遠赤色光を加えると、収穫後に寒さへ耐える力が高まったという研究があります。論文は、屋内栽培における光の構成が収穫後の低温被害に影響しうるという点を、別立てで扱っています。

逆に、まだ分かっていないこともあります。栽培時の温度や、一日のうち光を当てる時間が収穫後の品質にどう影響するのかは明確ではない、と論文は記しています。

N.THINGがバジルを育てる方法

N.THINGはスイートバジルとタイバジルを自社で栽培し、供給しています。バジルはレタスと同じ設備で育ちますが、N.THINGは作物ごとに栽培レシピを個別に設けています。光と温度、湿度、二酸化炭素、養分をすべて制御する環境をつくり、一つの作期で得られたデータは次の作期の設定値を決めるのに使います。

収穫した野菜はその日のうちに出荷します。バジルのように収穫後が難しい作物ほど、育てる条件と収穫から出荷までの時間を併せて見る必要があります。

N.THINGが栽培し供給する作物は、ソリューションページでご覧いただけます。

タグ

  • バジル
  • ハーブ
  • 低温障害
  • 収穫後管理
  • 垂直農場

この記事をシェア